香月泰男の略歴とキャリア

1911年、山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅下)に生まれる。医師の家系に生まれるも、美術を志して上京。
東京美術学校西洋画科で藤島武二に師事しつつ、ピカソやゴッホ、梅原龍三郎らの表現に強く影響を受け、独自の画風を追求。
1934年、「雪降りの山陰風景」が国画会に初入選。1939年、「兎」で文展特選を受賞。
1942年、兵役により満州に従軍、敗戦後はソ連軍によりシベリアへ抑留され、約2年間の過酷な強制労働を経験。
帰国後、北海道や山口県下関市で美術教師として勤務しつつ、戦後の内面と向き合うように《シベリア・シリーズ》を構想・制作。
1969年に同シリーズで第1回日本芸術大賞を受賞。
1974年、心筋梗塞により死去。享年62。

香月泰男の作風とテーマ

香月の絵画は、戦争と死という人類普遍のテーマに、個人の体験と魂を込めて描いた深い具象表現です。
シベリア抑留体験に基づく連作では、黄土色・黒・灰色を基調に、凍てついた地平線、うずくまる人影、曇天など、無言の恐怖と希望の不在を象徴的に表現しています。
また、晩年になると家族や故郷、台所などの身近な日常へと視点が移り、色彩を取り戻した作品群が生まれます。
描くことは生きることという信念のもと、戦争も平和も、すべてを包み込む“生活の絵画”へと昇華させた画風が特徴です。

代表作紹介:香月泰男の作品世界

●《シベリア・シリーズ》(全57点)
戦後日本絵画史に残る連作。シベリア抑留の実体験を、極限まで抑制された絵画構成と重厚な絵肌で表現。
「顔」「冬」「塹壕」など、一点一点に精神的深みが宿る。
●《台所》シリーズ
家族や食卓をモチーフに、戦争からの回帰としての“生活”を描いた作品群。温かみと哀感が交錯。
●《兎》(1939)
文展特選受賞作。装飾性と写実性が交差した初期の代表作。

市場での評価と香月泰男作品の価値

香月泰男の作品は、芸術作品としてだけでなく戦争の証言としての記録性・精神性を評価されており、非常に高い市場価値を持っています。
特に《シベリア・シリーズ》や晩年の油彩は、作品の規模・来歴により1,000万〜5,000万円級での取引実績もあります。
また、スケッチ・ドローイング・挿画なども資料的価値が高く、研究者や美術館からの需要も年々高まっています。

香月泰男作品の買取市場での傾向

以下のような条件を満たす作品は特に評価が高まっています。

●《シベリア・シリーズ》原画または関連作
●戦後の「台所」・家族主題・生活風景の油彩作品
●文展・国画会時代の受賞作/展覧会出品歴付きの作品
●長門市香月泰男美術館に準ずる来歴作品
●肖像・骨格描写に精神性がある小品・写生も人気

香月泰男を知ることは、戦争の記憶と人間の回復を知ること

香月泰男は、戦争という極限体験を、表現として昇華し、絵画によって人間らしさを取り戻すという静かな闘いを続けました。
その筆には、怒りや絶望だけでなく、希望や生活の温もり、そして未来を信じる眼差しがありました。
彼の作品を通して、「描くこと」とは「記すこと」、そして「生きること」だという本質が見えてきます。

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