井手宣通 いでのぶみち

⚫︎1912年、熊本県上益城郡御船町に生まれる。
⚫︎1930年、東京美術学校西洋画科に入学。藤島武二、小絲源太郎に師事。
⚫︎1933年、帝展に《漁夫と子供》を出品し初入選。
⚫︎1935年、西洋画科を卒業後、彫刻科にも進学し1940年に卒業。彫刻的な構成感覚も絵画に活かされた。
⚫︎戦中、海軍報道班員として東南アジアに従軍。
⚫︎戦後、新樹会の創立、日洋会の設立に参加。画壇刷新に尽力。
⚫︎1965年、日展出品作《賀茂祭》で文部大臣賞を受賞。
⚫︎1966年、《千人行列》で日本芸術院賞を受賞。
⚫︎1977年、日洋会を創立。
⚫︎1990年、文化功労者として顕彰。
⚫︎1991年、日展理事長に就任。
⚫︎1993年、逝去（享年81）。没後、勲二等瑞宝章を受章。

熊本市現代美術館には、井手宣通記念ギャラリーが設置されており、その功績が顕彰されています。

井手の作品には、伝統行事・民俗・祭礼といった題材を鮮やかに描くことで、日本人の精神性と躍動感を映し出す力があります。

⚫︎群像に込められた力強さと構成力
《千人行列》《野馬追》など、祭りや風俗に取材した群像表現は、画面に活気と秩序を共存させました。
⚫︎明るく豊かな色彩表現
戦前の光風会時代から、南方体験を経て、戦後はより開放感ある色使いへと展開。筆触に抑揚があり、鑑賞者の視線を導く構成力も際立ちます。
⚫︎写実の中にある抒情と情熱
細密描写にこだわりながら、画面には熱気や感情もにじみ、日本的リアリズムの一つの完成形を示しています。

●《賀茂祭》（1965年）
日展出品作。京都の伝統行事「葵祭」を題材に、静と動を巧みに描き分けた秀作。文部大臣賞受賞作。
●《千人行列》（1966年）
日本芸術院賞受賞作。絢爛な祭りの装束と人々の動勢が、鮮烈な構成と色彩で描かれた群像作品の代表格。
●《野馬追》
福島の伝統行事を描いた大作。馬の躍動、人々の気迫が画面から伝わる、井手独自の日本的叙事絵画。

井手宣通の作品は、日展・日洋会の重鎮としての評価と、主題性・技術性の高さから、現在でも安定した市場価値を誇ります。特に大作の群像画や受賞歴のある祭礼画は、美術館・コレクター双方からの注目度が高い傾向にあります。

⚫︎油彩作品：120万〜400万円前後（サイズ・構図・来歴により上下）
⚫︎日展出品作や芸術院賞受賞作に類するテーマは特に人気
⚫︎群像、行事、風俗画などを中心に、教育・文化施設への収蔵例も多い

井手宣通は、日本の風土・行事・人の営みを、具象洋画というかたちで描き続けた記録者であり、創作者でもありました。
その作品は、写実という技法を超えて、土地と人の記憶、躍動、希望までも写し出します。
画壇活動にも深く関わり、後進を育て、日本のリアリズム洋画に確かな礎を築いた井手のまなざしは、今なお絵筆の先に息づいています。

祭りと群像の名手／日展・芸術院賞受賞作もご相談ください。