明朗な色彩と点描で日本の風景を描いた画壇の温厚派
高田誠(たかだまこと)は、昭和から平成にかけて活躍した日本の洋画家で、点描を主体とした温かな風景画と静物画で知られます。
16歳で二科展に初入選という早熟の才能を発揮し、戦後は日展や一水会を舞台に、60年以上にわたって安定した制作を続けました。
中間色の美しさを活かした画面構成、リズミカルで穏やかな筆触、そして美術教育者としての功績により、日本洋画の発展と地方芸術文化の普及に大きく貢献した画家です。
⚫︎1913年、埼玉県浦和町(現・さいたま市)に生まれる。
⚫︎1929年、16歳のときに《浦和風景》で二科展初入選。
⚫︎安井曾太郎に師事し、二科技塾(のちの番衆技塾)にて熊谷守一・山下新太郎らから学ぶ。
⚫︎戦後は日展、一水会展を中心に活動。
⚫︎1955年より埼玉大学教育学部美術科の講師を務め、後に玉川大学の客員教授として美術教育にも尽力。
⚫︎1968年、《雑木林のある風景》で日展文部大臣賞受賞。
⚫︎1972年、日本芸術院賞受賞。1978年、日本芸術院会員に就任。
⚫︎1990年、浦和市名誉市民の称号を受ける。
⚫︎1992年、肝不全のため逝去(享年79歳)。
高田の作品は、自然の調和と光を大切にした、見ていて心が安らぐような構成が特徴です。点描技法を活かしつつも、きらめきや温度感のある風景を描き出しました。
⚫︎点描による明快な画面構成
点を積み重ねることで光と空気を可視化し、風景や静物に“時間の流れ”を感じさせる表現が印象的。
⚫︎中間色とリズムある色彩設計
決して派手ではないが、画面全体にやさしく明るい印象をもたらす絶妙な色使い。
⚫︎雑木林、湖畔、静物などの日常に寄り添う題材
日本の風景、自然の佇まい、季節のうつろいを身近なテーマとして捉えた作品群。
⚫︎《浦和風景》(1929年)
16歳での二科展入選作。地元浦和の風景を点描的に描いた初期の秀作。
⚫︎《雑木林のある風景》(1968年)
日展文部大臣賞受賞作。春から初夏にかけての雑木林と陽光が、明るいタッチで表現されている。
⚫︎《湖畔》《果物と壺》《陽だまりのテーブル》
日常の空間に“静けさと幸福”を感じさせる静物画シリーズ。点描と色彩の柔らかさが特徴。
高田誠の作品は、美術館・百貨店の回顧展などでも安定した評価を受けており、風景画や静物画は特に一般家庭向けコレクションとしても人気です。
⚫︎油彩作品:50万〜200万円前後(サイズ・保存状態・受賞歴により変動)
⚫︎《雑木林》《果物》《湖畔》など代表的シリーズは安定した需要あり
⚫︎署名・状態良好な作品はコレクター・教育機関からの引き合いも強い傾向
高田誠は、華やかな前衛性を避けながらも、技法・構成・色彩において独自の洗練を極めた静かな革新者でした。
風景や静物の中に宿る「音のない詩情」は、観る者の心に穏やかな余韻を残します。
点描という方法の中に、光と空気と感情が宿る。
その温かく静かなまなざしは、戦後から平成まで、日本洋画に日常の光を描き続けた稀有な存在として、今も多くの人に愛されています。
点描と彩りの画家/風景・静物作品のご相談を承ります。