叙情と幻想で具象と抽象を架橋した心象のモダニスト
モダンアートの先駆者にして“詩的抽象”を描いた日本洋画の架け橋
山口薫(やまぐちかおる)は、1930年代から1960年代にかけて日本の洋画界に新たな潮流をもたらした、詩的かつ幻想的なモダンアートの先駆者です。
抽象と具象の中間をゆらぎながら、鋭い感性と柔らかな情感で構成された心象的な世界観を描き続けた彼の作品は、今もなお高い芸術的評価を受けています。
エコール・ド・パリの影響を受けながらも、単なる模倣ではなく日本人としての感性と風土を含んだ独自の叙情表現を確立。教育者としても東京芸術大学で多くの後進を育て、モダンアートの思想と実践を次世代へ伝える重要な役割を果たしました。
1907年、群馬県高崎市(旧・榛名山麓)に生まれる。
1930年、東京美術学校西洋画科(現・東京芸術大学)を卒業後、フランスに留学し、エコール・ド・パリやシュルレアリスムの影響を受けながら自らの芸術観を深化させました。
帰国後は、新時代洋画展・自由美術家協会・モダンアート協会の設立メンバーとして活動し、日本におけるモダンアート運動の重要人物となります。
戦後はサンパウロ・ビエンナーレ、ヴェネツィア・ビエンナーレなど国際展にも出品され、海外からの評価も獲得しました。
1952年からは東京芸術大学で教育にも尽力し、1968年、胃がんのため60歳で逝去。
山口薫の作品は、具象と抽象のあいだを揺れるような“心象風景に特徴があります。
単なる写実ではなく、記憶・夢・内的感覚を重ね合わせたような世界を構成し、そこには言葉を超えた詩情と幻想が宿ります。
色彩はやわらかく、画面はしばしば沈黙のような静けさを持ち、形は象徴的なモチーフとして浮かび上がります。
代表作《紐》《花子誕生》《ノートルダァム》《若い月の踊り》などは、彼独自の“見えないものを描く”という試みに満ちた作品です。
●《紐》(1939)
具象的モチーフの中に抽象的構成を織り交ぜた初期の代表作。
●《花子誕生》(1951)
家族や生命を主題にした心象画。柔らかな色調と幻想的な構成が際立つ。
●《ノートルダァム》(1954)
パリ滞在の記憶を心象化した名作。現実と記憶が交錯する構図が印象的。
●《若い月の踊り》(1968)
晩年の傑作。抽象的なフォルムに叙情と動きが凝縮された、まさに“踊る心象画”。
山口薫の作品は、国内外のモダンアートコレクターや美術館からの高い評価を受けています。
市場流通数は少ないながらも、油彩の代表作や国際展出品作、具象と抽象のバランスが美しい作品は、数百万円〜2,000万円以上の価格帯で取引されることがあります。
また、スケッチや初期作品も市場での人気が高く、美術史的価値に加えてコレクターズアイテムとしての希少性も評価されています。
以下のような条件を満たす作品は特に高い評価を受けています。
⚫︎1930〜1960年代の油彩心象画(具象と抽象の中間様式)
⚫︎ビエンナーレ出品歴ありの国際的評価作
⚫︎モダンアート協会関連作・展覧会カタログ掲載作
⚫︎《紐》《花子誕生》《若い月の踊り》に近いテーマ・構図の作品
⚫︎東京芸大教授時代の資料や下絵・素描
山口薫の作品には、風景も人物も、音も言葉も描かれていません。
しかしそこには、沈黙の中に響く音楽のような、幻想の中に宿る現実のような不思議な感触があります。
抽象と具象、理性と感性、ヨーロッパと日本、その狭間を詩のように描いた山口薫は、まさに心象の画家でした。
写真で簡単査定/抽象・心象・具象作品すべて対応可能