宮永岳彦 みやながたけひこ

⚫︎1919年、静岡県磐田郡に生まれる。
⚫︎1931年、名古屋市立工芸学校に入学。卒業後は松坂屋名古屋本店に入社し、宣伝部門で絵に携わる。
⚫︎1942年、第29回二科展に初入選し、洋画家としての道を本格的に歩み始める。
⚫︎戦後は神奈川県秦野市に拠点を構え、銀座松坂屋宣伝部に勤務しながら創作を継続。
⚫︎1950年代以降は小田急電鉄のポスターやロマンスカー（3000形SE）の塗装デザイン、ぺんてる社クレヨンパッケージイラストなどを手がけ、産業・広告と芸術の境界を越える活動で注目を集める。
⚫︎1972年、二紀会理事に就任。1979年には日本芸術院賞を受賞、1986年には二紀会理事長となる。
⚫︎1987年、消化管出血により死去（享年68）。死後、勲三等瑞宝章が追贈された。

宮永の油彩画には、写実に立脚しながらも柔らかな色彩と構成美が漂い、
特に人物像や民族衣装のテーマには優雅さと視覚的安定感が宿っています。
一方でポスターやイラストでは、グラフィック的センスと明確なメッセージ性が特徴であり、特に「ぺんてるくれよん」の動物イラストや、小田急沿線の観光ポスターは、今なお多くの人々にとって記憶に残るビジュアルとなっています。
晩年はルネサンス美術や民族衣装に関心を深め、表現の幅をさらに広げていきました。

●《婦人像》《民族衣装を纏う女性》
油彩の代表作群。優美な構図と穏やかな色調で、人物像の柔らかさと存在感を両立。
●《ぺんてるくれよんパッケージイラスト》
1955年以降、現在も使われるロングセラー・パッケージ。親しみやすく温かい表情の動物たちを描く。
●《小田急ロマンスカー（3000形SE）》デザインカラー
オレンジとグレーの明快な配色で、新時代の“スピードとやさしさ”を表現。
●各種観光ポスター・雑誌表紙画
週刊漫画TIMES・小田急観光誌などで、実用性と美術性を兼ね備えた構図を展開。

宮永の油彩画作品は、特に人物像・女性像を中心に高く評価され、300万〜1,200万円級での取引も見られます。
一方、デザイン・イラスト分野での業績に関しては、企業広告・ポスター原画などに美術史的再評価が進行中です。
また、「ぺんてるくれよん」パッケージの原画や試作、ロマンスカー関連資料などは、美術館・鉄道資料館からの収集対象となっており、実用美術と純粋美術の接点に立つ貴重な作家として注目度が年々高まっています。

以下のような作品に高評価がつく傾向にあります。

⚫︎油彩による人物像・女性像（展示歴付き・裏書明瞭）
⚫︎二紀会出品作品（受賞歴あり）
⚫︎観光ポスター・クレヨンパッケージ原画・車両カラー案の資料
⚫︎雑誌挿絵や表紙絵の原画・アーカイブ用スケッチ類
⚫︎晩年の民族衣装や歴史モチーフ作品

宮永岳彦は、ただ「画家」としてだけでは語りきれません。
彼は、人々の暮らしのそばに絵を届けた文化の伝達者であり、 美術館の外にも、駅や文具棚の中にも、そっと美を宿らせた存在でした。
油彩もイラストもポスターも、その本質は「見る人の心をあたためる」ことだったのです。

写真で簡単査定／油彩・ポスター・クレヨン原画すべて対応可。