もの派を通じて現代美術に東洋思想を導入し新たな地平を拓く
リー・ウーファン(李禹煥、Lee Ufan、1936年生まれ)は、韓国・慶尚南道出身で、日本を拠点に活動する国際的な現代美術家です。哲学者としての経歴を持ち、「もの派(Mono-ha)」の中心人物として、東洋の禅思想と西洋のミニマリズムを融合させた独自の芸術世界を築いてきました。
1956年に日本へ渡り、日本大学で哲学を学びました。1960年代末からは、「もの派」と呼ばれる芸術運動の理論家かつ実践者として活躍。自然素材や工業素材の特徴を活かし、物と物、物と人との関係性を重視した作品を制作しました。2010年には香川県直島に「李禹煥美術館」が開館し、国内外で多数の個展を開催。グッゲンハイム美術館やヴェルサイユ宮殿、ポンピドゥー・センター・メスなどの主要美術館にも収蔵されています。
リー・ウーファンの作品は、石や鉄などの工業素材を使った彫刻と、シンプルな点や線を活かした静謐な絵画の二面性を持ちます。彼の芸術は、禅の美意識に根ざしながら、西洋のミニマリズム的要素を取り入れ、物質と空間、存在と非存在の相互関係を探求。作品に宿る余白や空間性は、観る者に深い瞑想的体験をもたらします。
代表的なシリーズ「関係項」では、素材の特性を活かしつつ、物と物が織りなす関係性を視覚化。絵画作品も、ミニマルな点や線の反復で静かなリズムを表現しています。2022年以降には日本国内でも大規模な回顧展が開催されるなど、ますます注目を集めています。
リー・ウーファンの作品は国際的に高い評価を受けており、彫刻作品を中心に取引価格は上昇傾向にあります。作品の保存状態や来歴、署名の有無は査定に大きく影響し、大型インスタレーション作品は輸送や展示環境の配慮も必要とされます。
リー・ウーファンは、東洋の哲学的伝統と西洋の現代美術を融合し、物と空間の新しい関係性を提示した革新的なアーティストです。彼の作品は深い精神性と静謐さを湛え、現代美術の重要な位置を占めています。作品所有者や査定・売却を検討されている方は、アートビリオンの専門査定サービスをご利用ください。