記号の画家が描いた抽象絵画の宇宙
ジュゼッペ・カポグロッシ(Giuseppe Capogrossi, 1900–1972)は、イタリア・ローマ生まれの抽象画家で、象徴的な記号による独自の画面構成で知られます。初期には風景や人物、静物といった具象絵画を手がけていましたが、戦後にはキュビスム的分解や厳密な構成を経て抽象へと移行。やがて単一のシンボル形態を繰り返し用い、リズミカルかつ空間的な広がりを持つ《Superficie(表面)》シリーズを確立しました。国際的前衛運動とも深く関わり、20世紀抽象美術の重要な潮流を形成した存在です。
1900年 ローマに生まれる。
1920年代 F.カレーナのもとで絵画を学び、1927年パリへ留学。フランス前衛美術に触れる。
1932年 ローマに戻り「グルッポ・ロマーノ」を結成。当初は温かみある色調と確かな描写力による風景・人物・静物を制作。
1940年代後半 構成的絵画やキュビスム的要素に傾倒し、抽象化を進める。
1951年 M.バロッコ、A.ブッリ、E.コッラらとグループOrigineを結成。
1952年 L.フォンタナらの**空間主義(Spazialismo)**に参加。
1950年代後半以降 象形文字のような独自の記号を反復・変奏し構成する《Superficie》シリーズを展開。
ヴェネツィア・ビエンナーレなど国際展に多数出品、世界各地の美術館に収蔵される。
2012年 没後40年を記念し、サヴォーナ市立絵画館、ヴェネツィアのペギー・グッゲンハイム・コレクション、ニューヨーク大学で回顧展開催。
⚫︎具象から抽象への変遷
初期は色彩豊かな具象画を制作し、温かみのある描写で評価された。
戦後はより構築的・分析的な構成へと移行し、モチーフの抽象化を推し進めた。
⚫︎記号による空間構築
単一の形態を象形文字のように反復配置し、リズムと秩序を生み出す。
記号は単純明快で識別しやすく、繰り返されることで異なる価値や印象を提示。
⚫︎国際前衛との交流
グループOrigine、空間主義への参加により、イタリア前衛と国際抽象の橋渡し的役割を果たした。
代表作:《Superficie》シリーズ全般
主な収蔵先:ペギー・グッゲンハイム・コレクション、MoMA、国立近代美術館(ローマ)ほか
市場評価:1950〜60年代のオリジナル作品は国際オークションで高額落札が続く。特に《Superficie》の代表的構成や大作はミュージアム級評価。
カポグロッシは、単純な形態を用いながらも無限の構成可能性を示した作家として再評価が進んでいます。現代のグラフィックデザインやモジュラーアートにも通じるその記号的構成は、時代を超えて新鮮な視覚体験を提供。近年の回顧展と研究の深化により、国際市場でも安定した人気を維持しています。
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