激情の筆触で人間像を解体した抽象表現主義の巨匠
ウィレム・デ・クーニング(Willem de Kooning, 1904–1997)は、オランダ出身でアメリカを拠点に活躍した抽象表現主義の代表的画家です。激しい筆致と奔放な構図で知られ、ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコと並び20世紀アメリカ美術を牽引しました。特に、1950年代初期から描き始めた「女」シリーズは、具象と抽象を往還する独自の造形感覚で、美術史に深い足跡を残しました。
1904年、オランダ・ロッテルダムに生まれ、青年期には商業美術会社で働きながらロッテルダム美術工業学校の夜間課程で学びました。この頃、モンドリアンらが主導した「デ・ステイル」運動にも触れ、造形思想を培います。
1926年に渡米しニューヨークへ拠点を移すと、1928年頃からアーシル・ゴーキー、スチュアート・デイヴィス、ジョン・グレアムらと交流。多様な芸術的刺激を受けつつ、1930年代は商業デザインの仕事やWPA(公共事業促進局)の連邦美術計画に携わりながら制作を続けました。
1948年、ニューヨークのイーガン画廊で初個展を開催し、同年にはノースカロライナ州ブラック・マウンテン・カレッジで教鞭を執ります。1950年代初頭に着手した代表作「女」シリーズでは、荒々しくも緻密な筆運びと形態の分解・再構築によって、女性像に新たな造形的生命を吹き込みました。
1960年代には抽象的な構成へと移行しましたが、晩年には再び「女」というテーマに回帰。作品には常に、色彩と形態の間に生まれる緊張感と、見る者を引き込む力強さが宿っています。1997年、ニューヨークで逝去するまで、その制作意欲は衰えることはありませんでした。
デ・クーニングの作品は、アメリカ美術の歴史において抽象表現主義の深化と拡張を象徴する存在であり、現代に至るまで多くの画家や造形作家に影響を与え続けています。
● アクション・ペインティングの体現者
感情の衝動を筆の運動に直接投影し、絵具の厚みや色の衝突を画面全体に展開。
●「女」シリーズ
肉体の輪郭を分解し、色彩と形態がせめぎ合う中で人間像のエネルギーを表現。
● 抽象と具象の往還
完全な非具象作品から、再び人間像に回帰するなど、画業全体が振幅に富む。
●《発掘》(1950, シカゴ美術館)
●《女と自転車》(1952–53, ホイットニー美術館)
●《Woman I》(1950–52, MoMA)
デ・クーニング作品は国際オークション市場でも高額で取引され、特に1950年代の「女」シリーズや大型キャンバスは数十億円規模で落札される例もあります。2020年代に入ってもニューヨークやロンドンでの回顧展、主要美術館での再評価が続き、抽象表現主義の文脈のみならず、現代美術市場全体における安定的な需要が確認されています。
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