色と形の純粋性を探求したハード・エッジの巨匠
エルズワース・ケリー(Ellsworth Kelly, 1923–2015)は、第二次世界大戦後のアメリカ美術において、抽象表現主義とは異なる静謐で精緻な造形を提示した画家であり、ハード・エッジ・ペインティングの代表的存在です。幾何学的形態と明快な色彩を組み合わせ、形と色そのものが持つ視覚的効果を追求しました。絵画だけでなく彫刻や版画にも精力的に取り組み、20世紀後半から21世紀初頭にかけて国際的評価を確立しました。
1923年、ニューヨーク州ニューバーグに生まれる。父は保険会社幹部、母は元教師。幼少期にニュージャージー州へ移り、以後も州内で転居を繰り返しました。
第二次世界大戦中は米陸軍の「ゴースト・アーミー」に所属し、戦術的欺瞞作戦に従事。この経験が後年の造形感覚にも影響を与えたとされます。戦後はボストン・ミュージアム・スクールで学び、1948年からフランスに渡航。滞在中、ハンス・アルプやコンスタンティン・ブランクーシの影響を受け、コラージュやレリーフ作品を制作。
1954年に帰国し、1956年ニューヨークのパーソンズ画廊で初個展を開催。1963年にはカッセルの「ドクメンタ」、1966年にはヴェネツィア・ビエンナーレに出品するなど、国際舞台での活動を拡大しました。
● ハード・エッジの代表者
色面の輪郭を明確にし、幾何学的形態と色彩の対比による視覚効果を探求。抽象表現主義の感情的筆致とは対極にある静謐な構成を提示。
●変形キャンヴァス
長方形や正方形だけでなく、不定形のキャンヴァスを使用し、作品そのものを空間的オブジェとして成立させる試みを行った。
●彫刻への展開
色彩と形態の研究は彫刻作品にも及び、屋外インスタレーションや大型立体作品でも同様の造形原理を実践。
●《赤・黄・青・白・黒》(1953, シカゴ美術館)
●《青・緑・赤》(1962–63, メトロポリタン美術館)
●《緑・青・赤》(1964, ホイットニー美術館)
ケリー作品は、アメリカ戦後美術の重要作家として世界的評価を受け、特に1950〜70年代の代表的色面作品や大型キャンヴァスはオークション市場で数百万ドル規模の落札価格を記録しています。近年もニューヨークやパリで回顧展が開催され、ミニマリズムやカラー・フィールド・ペインティングの文脈で再評価が進行中です。主要美術館の収蔵や展示も継続しており、その需要は安定しています。
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