絵画的感情と建築的秩序を融合する抽象絵画の巨匠
ショーン・スカリー(Sean Scully, 1945–)は、アイルランドに生まれ、アメリカを拠点に活動する現代抽象絵画の第一人者です。重厚なストライプや矩形のパターンを特徴とする作品は、建築的構造と絵画的感情を融合させた独自のビジュアル言語を確立し、国際的に高い評価を得ています。
1945年、アイルランド・ダブリンに生まれ、幼少期にロンドンへ移住。ロンドンのセントラル美術学校、クロイドン美術学校で学び、1972年に渡米してハーバード大学やプリンストン大学で教鞭を執る。1983年にはアメリカ市民権を取得し、ニューヨークを拠点に活動を展開しました。
1989年と1993年にはターナー賞の候補となり、欧米各地で精力的に展覧会を開催。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、ロンドンのテート・ギャラリーなど世界中の主要美術館に作品が収蔵されています。
ストライプと矩形の構成
初期にはハードエッジ絵画に取り組みましたが、短期間でその手法を離れ、マスキングテープを使わない手描きのストライプを追求。油絵具を厚く塗り込み、微妙な揺らぎや質感を活かした画面は、秩序と感情の共存を示します。
建築的構造と絵画的感情
複数のパネルを組み合わせる構成や、壁とパネルの関係を意識した作品は、建築的な空間感覚を生み出します。同時に、色彩や筆致の温かみが、構造的な冷たさを和らげ、人間的な情感を付与します。
近年の展開
近年は象徴的な縞模様に加え、チェッカーボードのような構成的パターンを展開。幾何学と感情のバランスを探る試みを続けています。
1980年代以降、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各地で多数の個展を開催。特に1990年代以降は欧米の主要美術館で回顧展や大規模個展が開催され、現代抽象絵画における重要な作家として位置付けられています。作品はメトロポリタン美術館、MoMA、グッゲンハイム美術館、テート・ギャラリーなどに所蔵され、国際的評価は揺るぎないものとなっています。
《Wall of Light》シリーズ
石積みの壁を想起させる矩形構成と、光を内包する色彩表現で知られる代表的連作。
《Passenger》シリーズ
複数パネルによる空間的構成で、移動や時間経過を示唆する抽象表現。
スカリーの大型キャンバスや主要シリーズ作品は、クリスティーズやサザビーズなど国際オークションで高額落札が続き、特に《Wall of Light》シリーズは安定した人気を誇ります。近年は美術館での大規模回顧展や新作発表も相次ぎ、コレクション市場における需要は拡大傾向にあります。
ショーン・スカリーの作品は、静謐な構造美の中に人間的な温もりと精神性を湛え、世界中の美術館や市場で高く評価されています。
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