錆色に刻む宇宙の循環を描く現代美術家
イ・ギソン(Lee Giseong, 1959–)は、宇宙の生成と消滅のサイクルを抽象的に描き出す韓国出身の現代美術家です。鉄粉を混ぜた赤褐色の絵具を用い、時間とともに錆びゆくキャンバスは、生命の有限性と変化を宿します。彼の代表的シリーズ「Kalpa(カルパ/劫)」は、バランスと調和が崩れ、やがて無へと至る宇宙的なプロセスを主題にしています。
1959年、韓国・リヨンに生まれ(※韓国生まれ)、武蔵野美術大学大学院を修了後、韓国啓明大学美術大学絵画科を卒業。ソウルやテグの美術館、ギャラリーで個展を開催し、その作品は韓国国立現代美術館美術銀行や駐日韓国大使館などに収蔵されています。
Kalpaシリーズ
「Kalpa」は、イ・ギソンの哲学において「宇宙が始まり、進行し、破壊され、無に還る周期」を意味し、「カルマ(業)」とは異なる概念です。鉄粉を混ぜた赤褐色の絵具が時間とともに酸化し、錆びていくことで、生命の終焉と変容を可視化します。
時間と物質の変化
厚く重ねられた絵具の躍動感は、その瞬間にしか存在しない表情を見せます。時間経過による変色や質感の変化も作品の一部として組み込み、完成後も変化し続ける「生きた絵画」を提示しています。
東アジア抽象の文脈
日本留学経験を背景に、具体美術協会やもの派、韓国の単色画(ダンセッファ)など、同文化圏に根差す抽象表現との共鳴が見られます。これらの影響を吸収しつつ、独自の素材感と宇宙観を融合させています。
イ・ギソンは韓国国内だけでなく、日本をはじめとする東アジアのアートシーンで高い評価を獲得。Shinwa Wise Holdingsは、アジアの抽象絵画の中でも特に高く評価すべき作家として彼を紹介し、2020年代に入ってからの個展で再注目を集めています。
韓国国立現代美術館や駐日韓国大使館収蔵作品という確固たる実績と、東アジア抽象絵画の国際的評価の高まりが相まって、今後の市場価値上昇が期待されています。特に「Kalpa」シリーズは、時間変化を伴う希少な作品性からコレクター需要が高まっています。
素材の変化と宇宙的時間観を融合させた独自の抽象表現による錆びゆく赤褐色の画面は、生命の循環と時間の不可逆性を静かに物語ります。
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