光の切片が描く建築の肖像を映し出す写真家
ルイザ・ランブリ(Luisa Lambri, 1969–)は、近代から現代に至る名建築の内部空間を、窓や扉といった開口部を通して切り取り、建築を記録でありながらもポートレイトのように捉える写真家です。ジョゼッペ・テラーニやル・コルビュジエらのモダニズム建築から、妹島和世+西沢立衛/SANAAが手がけた現代建築まで、その被写体は多岐にわたります。彼女の作品は、建物の機能や構造を抽象化しつつも、個人的な記憶や体験の痕跡を宿す、二重性を持った視覚体験を生み出します。
1969年、イタリアに生まれる。建築写真の文脈に位置しながらも、単なる記録ではなく、被写体を詩的・心理的空間として再構成するアプローチを確立。2000年以降は、金沢21世紀美術館やSANAA設計の建築など、現代建築に焦点を当てたシリーズを継続的に制作。これまでに欧米および日本の美術館・ギャラリーで多数の個展・グループ展を開催し、建築と写真の関係性を更新し続けています。
開口部への着目
窓や扉など、外と内をつなぐ建築の境界部分に注目し、光や外景を介して建物の内的な性質を映し出します。
抽象化と記憶の同居
部分的な切り取りによって、建築の全体像から機能的文脈を切り離し、抽象的で感覚的なイメージへと昇華。そこに自身の体験や記憶を重ねることで、個人的な物語性を付与します。
静謐な構図と光の質感
構図の精緻さと光の柔らかな描写により、被写体は時間から切り離されたかのような静謐さを帯びます。
ランブリの作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、シカゴ美術館、金沢21世紀美術館をはじめとする世界各地の美術館に収蔵。国際的な建築展や現代美術展においても、建築批評と写真芸術の橋渡しをする作家として高く評価されています。
近年は、現代建築をテーマにしたシリーズの評価が高まり、特に金沢21世紀美術館やSANAA関連の作品は国内外のコレクターから注目を集めています。建築と写真のクロスオーバー分野における代表的作家として、市場価値は安定的に推移しつつも緩やかな上昇傾向にあります。
光と構図が織りなす静かな緊張感は、観る者に建物の外形を超えた「内面の肖像」を感じさせます。彼女の作品は今後も、建築写真と現代美術の双方において重要な位置を占め続けるでしょう。
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