帝展で女性初の特選を獲得した、近代女流洋画のパイオニア
有馬さとえ(ありまさとえ)は、大正から昭和戦後にかけて活躍した日本の洋画家であり、帝展において女性として初めて特選を受賞した先駆的な存在です。
明治後期に鹿児島に生まれ、早くから芸術の道に入り、岡田三郎助に師事して本郷洋画研究所で学びました。
女性洋画家の地位が確立していなかった時代にあって、堅実な写実と柔らかな抒情性を備えた作品で注目され、以後も日展や光風会で長く洋画界を支えました。
1893年5月20日、鹿児島市に生まれる(本名:サト)。父の死去により家庭は困窮するが、芸術への情熱から鹿児島県立第一高等女学校を中退し上京。
1911年頃、洋画家・岡田三郎助に師事し、本郷洋画研究所で洋画を学ぶ。
大正から昭和初期にかけて文展、帝展、新文展などに継続的に出品。
1926年、帝展出品作《花壺》で女性として初の特選受賞という快挙を達成。翌1927年には無鑑査扱いとなり、1928年には《窓ぎわ》で再び特選。
以後、女流画家の草分けとして広く知られるようになる。
戦後も日展の招待出品、審査員、評議員、参与などを歴任し、光風会名誉会員の称号を持つ。
1978年2月25日、杉並区のアトリエで晩年まで制作を続けたのち逝去。
有馬の作風は、師・岡田三郎助譲りの端正な写実と柔らかい女性的感性に支えられた油彩画です。
人物画や室内風景、花、静物を中心とした構図には、慎ましさと品格、そして日常の美しさを捉える優れた観察眼が見て取れます。
また、女性作家としての視点を活かし、家庭や身辺の静かな情景を丁寧に描写した点で、戦前の男性中心の洋画界に独自の地歩を築きました。
●《花壺》(1926年、帝展特選)
花と壺のシンプルな構成ながら、抑制された色調と造形に深い精神性が宿る。
●《窓ぎわ》(1928年、帝展特選)
窓辺に佇む女性像を主題に、自然光と内面世界が柔らかく交差する佳作。
●その他
静物画や人物小品など、家庭的モチーフを中心に多数。いずれも温かみと品格のある表現が魅力。
⚫︎帝展での女性初の特選受賞(1926年)は当時の美術界において画期的
⚫︎日展では招待出品・審査員・参与などを歴任し、制度的評価も確立
⚫︎光風会名誉会員としても長年にわたり女性作家の育成に尽力
⚫︎近代女性洋画家のパイオニアとして、美術史的価値が高い
有馬さとえの作品は、その歴史的重要性と完成度の高い写実性から、女流洋画の黎明期を象徴する存在として評価されています。
⚫︎油彩静物・人物作品:150万〜600万円
⚫︎小品・スケッチ類:50万〜150万円前後
⚫︎帝展・日展出品歴のある作品は特に高評価
⚫︎来歴・保存状態・文献掲載があればプレミアム評価の対象に
現在では女性洋画家の再評価が進む中、先駆者としての市場的価値も高まっています。
有馬さとえは、洋画という当時は男性優位だった分野において、確かな筆致と静謐な精神性で独自の道を切り拓きました。
その作品は、花や窓辺といった穏やかな主題に、美と誠実さを込めた静かな闘いの証です。
現代の私たちにとって、有馬の絵は“女性が描いた日本近代”の貴重な証言であり、歴史を語る静かな声でもあります。
帝展・日展出品作、静物・人物小品、文献付き作品まで受付中。