宮脇愛子(みやわき あいこ、1929–2014)は、日本を代表する現代彫刻家であり、美術家です。真鍮やステンレス、ガラス、石など多様な素材を用い、「空間」「時間」「移ろい」といった抽象的なテーマを、素材の特性と繊細な線的表現を通じて詩的に表現しました。世界各地の美術館や公共空間に作品を設置し、女性彫刻家として国際的な地位を築きました。
宮脇愛子は1929年に東京都(または静岡県熱海市)で生まれました。1952年に日本女子大学文学部史学科を卒業後、1953年に文化学院美術科で阿部展也や斎藤義重に師事し、美術家としての基礎を築きます。1957年にはアメリカに短期留学し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校とサンタモニカ・シティ・カレッジで美術を学びました。1959年に東京・養清堂画廊で初個展を開催し、以降ミラノ、パリ、ニューヨークなど国際的な舞台で作品を発表。1967年にグッゲンハイム国際彫刻展買い上げ賞、1977年には北九州市立美術館賞、1983年にはヘンリー・ムーア大賞展で特別優秀賞を受賞するなど、多くの栄誉を得ています。1989年にはパリ新凱旋門近くの公共空間に大型彫刻を設置しました。
宮脇の初期作品は絵画的なマチエールを重視し、大理石粉を混ぜた絵画やパレットナイフで反復的なパターンを描く平面作品を制作しました。1970年代からは真鍮やステンレスのロッドを用いた立体作品を展開し、特に《うつろひ(UTSUROHI)》シリーズは風や光、周囲環境と呼応して形を変える線的彫刻として国内外で高い評価を受けています。バルセロナやパリ、群馬県立近代美術館などに設置され、空間と素材の響きを詩的に表現した代表作となっています。
宮脇愛子は1960年代から欧米の前衛芸術家とも交流し、女性彫刻家として国際的な評価を確立しました。数々の賞歴と共に国内外の美術館に作品が収蔵・展示されており、その空間的・時間的な表現は多くの批評家や研究者から高く評価されています。
宮脇愛子は素材の持つ特性と空間性を巧みに用い、風や光と響き合う繊細で詩的な「線」を描き出した現代彫刻家です。日本の現代美術を代表する存在として、国内外でその功績と影響は色あせることなく評価され続けています。