山田正亮は1929年、東京府荏原郡荏原町(現・品川区)に生まれ、本名は山田正昭です。戦時中は陸軍兵器行政本部製図手養成所に入所し、終戦を迎えました。1950年には東京都立工業高等専門学校を卒業。1953年には抽象画家の長谷川三郎に師事し、同時にデザインの仕事も経験しました。1949年から日本アンデパンダン展や自由美術展などに出品を続け、1958年に教文館画廊(東京)で初の個展を開催。1964年に上北沢にアトリエを構え、郊外で静かに創作を続けました。1987年には第19回サンパウロ・ビエンナーレに出品し、2010年に胆管癌のため81歳で亡くなりました。
山田正亮は、戦後の美術界の潮流や派閥にとらわれず、孤独な制作活動を続け、約5,000点以上の作品を残しました。
その一途な制作態度は「一途であることの豊かさ」を示し、色彩や構成の探求は戦後日本美術に新たな視座をもたらしました。近年は欧米でも再評価が進み、2016年には京都国立近代美術館と東京国立近代美術館で大規模回顧展が開催されるなど、国内外で高い評価を得ています。
山田の創作活動は長期にわたり多彩ですが、特に以下のシリーズが代表的です。
Still Life(1948–1955)
戦後間もなく描かれた静物画シリーズ。記憶をたどりながら瓶や果物を描き、徐々に輪郭が失われ抽象へと向かいます。
Work(1956–1995)
約40年間にわたり制作された主軸のシリーズ。初期はアラベスクや矩形の色面、1960年代前半には多色ストライプが特徴的で、やがて白や限定された色の繰り返しによるストライプ画面に進化。作品には「Work B.134」「Work D.27」などの通し番号が付けられ、緻密な色彩の重なりと画面全体の調和を追求しました。1点の制作に1〜2年かけることもあり、国内外で高く評価されています。
Color(2001–)
晩年のシリーズで、単色で塗り込められた画面の端から下層の色がのぞくことで、画面の重層性を感じさせます。
山田正亮の作品は国内外のコレクターから根強い支持を受けており、安定した市場価値を保持しています。
小~中規模のストライプ作品であれば200万円前後から取引されることが多く、重要な作品や希少な初期作、また大作や状態の良い作品では500万円以上の高額取引も見られます。再評価の流れにより、価格は今後も堅調に推移すると予想されます。