松谷武判(まつたに たけさだ、1937年〜)は、日本の現代美術を語る上で欠かすことのできない「もの派」の中心的作家のひとりです。
石、紙、布、木、砂、ポリウレタン──。素材の持つ「本来的なありよう」に鋭く目を向け、それらを加工するのではなく、「配置」することで意味を生じさせる松谷のアプローチは、日本的な自然観と脱人間中心主義的な美学を内包しています。
⚫︎絵画でも彫刻でもない“存在の配置”
⚫︎無作為に見えて高度に構築された空間認識
⚫︎時代や潮流ではなく“物質”そのものに向き合う姿勢
それらの態度は、戦後の美術史においても特異であり、欧米ミニマリズムやアルテ・ポーヴェラと共振しながらも、独自の美学を育んできました。
1937年:大阪府に生まれる
1960年代後半:関西を中心に「もの派」運動に参加
1970年:パリに拠点を移し、国際的な活動を展開
1980年代以降:ポリウレタン樹脂による独自の立体絵画へと展開
2010年代〜:再評価が進み、東京国立近代美術館などで大規模展が開催
松谷の表現は、初期は石や木などを用いた静謐な構成に始まり、パリ移住後は鮮烈な色彩と樹脂による“物質的絵画”へと変貌を遂げていきました。にもかかわらず、根底にある「存在への敬意」は一貫しています。
《Work》シリーズ(1960〜70年代):石、木片、和紙などを用いた静物的配置作品
《Pénétration》シリーズ(1970〜):ポリウレタン樹脂による色彩と素材の交錯
「もの派」グループ展出展作品:李禹煥や関根伸夫らと並ぶ初期代表作
カンディンスキー賞(2010年代以降)の影響を受けた後期絵画群
特に《Pénétration》は「色」と「厚み」を備えた物質的絵画として、絵画と彫刻の境界を曖昧にする試みとして高く評価されています。
⚫︎国際的文脈での「もの派」再評価(欧米での回顧展、文献出版)
⚫︎パリを拠点に活動していたため、欧州市場での関心の高まり
⚫︎作品そのものの保存状態の良さと視覚的強度
日本美術の静けさとヨーロッパ的構成感の融合
現代の脱ジャンル的なアート潮流の中で、松谷の「素材の意味性を問う」態度はむしろ時代に先んじた表現とみなされつつあります。
初期「もの派」作品(石や木の構成):800万〜3,000万円
《Pénétration》シリーズ(ポリウレタン):600万〜1,800万円
小型ドローイングやスタディ作品:150万〜500万円
欧州個展出展作品、図録掲載作品:高額落札の傾向あり
現在は特に海外オークション市場での需要が伸びており、評価の定着とともに今後さらなる価格上昇も見込まれます。
⚫︎作品の制作年と素材:特に1960年代〜70年代初期の作品は極めて希少
⚫︎展覧会歴・図録掲載の有無
⚫︎保存状態と額装の有無(ポリウレタン作品は特に注意)
⚫︎真贋証明・署名・付属資料の有無
松谷作品は国内外を問わず、美術館級のコレクション対象となるケースも多いため、査定には専門知識が必要です。当社では、もの派関連の実績を多数有し、丁寧かつ透明な対応を心がけています。