河口龍夫(かわぐち たつお、1940年兵庫県神戸市生まれ)は、日本を代表する前衛美術家・現代美術家です。1960年代から国内外で活動を展開し、「見えるもの」と「見えないもの」、そしてそれらの関係性をテーマに制作を続けています。多摩美術大学卒業後、グループ〈位〉を結成、欧米での研修を経て筑波大学教授を務めるなど、教育者としても多くの若手を育成。彼の作品は即物的な素材を用いながら、時間や存在の本質を表現し、現代美術史における独自の地位を築いています。
1940年に兵庫県神戸市で生まれ、1962年に多摩美術大学絵画科を卒業。1965年にグループ〈位〉を結成して活動を始め、1975年から1976年にかけて文化庁の在外研修員として欧米に滞在。1983年から筑波大学芸術学系の助教授、1991年に教授に就任し、2003年に名誉教授となるほか、京都造形芸術大学や倉敷芸術科学大学の教授を歴任。中国の国際的アーティスト蔡國強も河口の研究室で学びました。
河口の作品は、「見えるもの」と「見えないもの」の境界を繊細に掘り下げ、物質感や時間、空白、生命の生と死の循環を表現します。金属、紙、布、木といった日常的素材を使い、物と物の関係やエネルギーの流れを探求。版画やインスタレーションには時間概念が色濃く反映され、『関係―時間・時のフロッタージュ』(1998)や『関係―小さきもの』(2002)などが代表作です。タイトルに「関係」がつく
『関係―時間・時のフロッタージュ』(1998)
『関係―小さきもの』(2002)
「河口龍夫―見えないものと見えるもの―」(兵庫県立美術館、2007)
「河口龍夫展 言葉・時間・生命」(東京国立近代美術館、2009)
「時間の位置」(川口市立アートギャラリー・アトリア、2016)
「Artist Voice I: 河口龍夫 無呼吸」(慶應義塾大学アート・センター、2021)
1968年・1973年にジャパン・アートフェスティバル優秀賞を受賞。2008年に第15回日本現代藝術振興賞、2017年に第58回毎日芸術賞を受賞し、戦後日本の現代美術を代表する重要作家として評価されています。
東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館、神奈川県立近代美術館、文化庁、デンマークのルイジアナ美術館など国内外の主要美術館に多数収蔵されています
河口龍夫は、素材と時間、見えるものと見えないものの関係性を鋭く追求した日本の現代美術の巨匠です。物質的でありながら哲学的な表現を展開し、国内外の美術界で高い評価を受け、教育者としても多くのアーティストを育てた重要な存在です。彼の作品は、時間や存在の本質を問いかけるものであり、現代美術における普遍的なテーマを提示し続けています。