加藤泉(かとう いずみ)は、石や木、布、キャンバスといった多様な素材を使い、原始的な人型を描き出す作品で知られる現代アーティストです。その特徴的な人物像は、どこか神話的で、縄文土偶やアフリカの仮面を想起させる造形を持ちながら、どこか可笑しみと現代性を併せ持っています。
「人間とは何か」「存在とは何か」という根源的な問いを、文字通り“かたち”にする作品は、国内外で高い評価を受け、現代美術市場でも存在感を強めています。
1969年、島根県生まれ。武蔵野美術大学油絵科を卒業後、東京を拠点に制作を開始しました。2000年代初頭から本格的にアートシーンに登場し、独特のプリミティブな人物像で注目されます。
2007年にはヴェネツィア・ビエンナーレに日本代表として参加。その後、フランスのカルティエ現代美術財団、アート・バーゼル、森美術館など国内外の著名美術館やアートフェアに作品が出展され、世界的な評価を確立していきました。
加藤の作品は、人間の「かたち」を通じて、生と死、精神と肉体、記憶と遺伝といった対立や循環を描き出そうとする試みです。大きな特徴は、白目が印象的な無表情の人型モチーフであり、それは絵画・木彫・布のぬいぐるみなど、様々な素材を通じて反復的に現れます。
また、顔と身体のバランスが崩れた奇妙なプロポーションや、即興的なドローイング感を残した筆致、手作業感のある素材使いが、作品に“原初的な生命”を吹き込んでいます。
彼の創作は、自己表現というよりは“世界との対話”のように感じられ、鑑賞者に「自分の中にある原始性」に触れるような感覚をもたらします。
《無題(2005年)》
キャンバスにアクリルで描かれた人型作品。過剰な目や長い手足、単純化された顔のパーツが、言語以前の“何か”を語るかのような強い印象を残します。
《木彫シリーズ(2008〜)》
彫刻刀で彫り出された木の人型像。素朴な木肌の質感と、目を惹くペイントが施され、まるで異世界の遺物のような神秘性を帯びています。
《ぬいぐるみ彫刻シリーズ》
布やフェルトなどの柔らかい素材で作られた人型の立体作品。子供の玩具のようでありながら、不穏さや存在の重みを併せ持つ、不思議な魅力のある作品群です。
加藤泉の作品は、欧米・アジアを問わず広範なファンを獲得しており、アート市場においても堅調な評価を受けています。特に彫刻作品や初期絵画シリーズには高い人気があり、アート・バーゼルやサザビーズなどでも出品実績があります。
市場価格の目安は以下の通りです。
⚫︎キャンバス作品(中〜大) 300万〜1,000万円以上
⚫︎木彫・立体作品 500万〜2,000万円以上
⚫︎ ドローイング・小作品 100万〜400万円
希少性や展示歴のある作品は、それ以上の価格で取引されることもあります。
ART Billionでも、加藤泉作品に関する査定依頼が増えており、以下のような条件を満たす作品は特に高評価が期待されます。
⚫︎美術館や国際展での展示歴がある作品
⚫︎ギャラリー・百貨店などでの購入履歴がある作品
⚫︎サイン・証明書が付属している
⚫︎木彫やぬいぐるみなどの立体作品
また、加藤の作品はシリーズ性が強いため、作品の出所や作成年、展示歴などが明確であることが査定において重要となります。
加藤泉は、絵画や彫刻といった伝統的なメディアを通じて、現代の私たちに“生きること”の根源を問いかけるアーティストです。その作品は、美術史や文化の枠を超え、言葉にならない普遍的な感覚に訴えかける力を持っています。
ご自宅に加藤泉の作品をお持ちの方、またはご家族からの相続・整理をご検討中の方は、ぜひ当社の専門査定をご活用ください。