1994年に長野県小諸市で生まれた仲衿香は、2019年に東京造形大学の絵画専攻を卒業。その後2022年から2023年にかけてはオーストリアのウィーン美術アカデミーに交換留学し、アラステア・マキンブンに師事しました。2024年には東京藝術大学大学院を修了し、小林正人の指導を受けています。CAF賞2018にて白石正美賞を受賞し、国内外の多彩な展覧会やアートフェアに参加するなど、確実に評価を高める期待の若手作家です。
仲の作品は厚塗りのアクリル絵具を駆使し、現代社会にあふれるSNSアイコンやロゴ、日常的な記号や風景を大胆に絵画空間へと落とし込みます。絵具の重なりや偶然に生まれる「ズレ」も積極的に取り込み、伝統的な絵画表現に新たな息吹を吹き込んでいます。近年は特にGoogleのHTMLコードやYouTubeロゴなどデジタル社会の象徴をモチーフに、変わりゆく現代の原風景をアートとして記録・保存しようという意識が強く感じられます。作品は一見ポップで親しみやすい印象ながら、社会批評的な側面や皮肉も込められており、多層的な解釈を可能にしています。
DEPTHシリーズ
抽象的で匿名性の高い顔を描いたシリーズ。2016年に愛知県美術館で発表され、2020年には代表作「I am a yellow」が同館に収蔵されました。
Rock Star/TIMEシリーズ
著名人やポップアイコンをモチーフにした作品群で、現代社会のイメージや権力構造を映し出しています。
Picture Diaryシリーズ
パンデミック期のネットニュースや社会情勢を着想に制作した作品群。
landscape of the web
Googleのソースコードなど、デジタル社会の基盤を厚塗りで視覚化した作品シリーズ。
個展
「Not Found」(SH GALLERY、2021年)、「現在地」(SH GALLERY、2019年)など、多彩なテーマで個展を開催しています。
仲衿香の作品は近年オークションやギャラリーでの評価が急上昇しており、特に厚塗りアクリルの作品は保存状態やサイズ、限定性によって異なりますが、買取相場は50万円から300万円前後と高額取引が見られます。2.5D版画などの新しい技法による作品も注目されており、市場での評価が着実に高まっています。
仲衿香は、日常に溢れる記号やロゴ、デジタル文化の断片を厚塗りの絵具によって大胆かつ偶然性を含む表現で描き出す、期待の若手現代美術家です。彼女の作品は時代の視覚文化を独自の視点で再構築し、ポップな表現の奥に社会的メッセージを内包しています。今後のさらなる活躍が大いに期待されます。