木原健志郎(きはら・けんしろう)は、ジオラマから写真、そして絵画へと媒介を重ねながら、記憶と映像の層を再構築する現代画家です。
昭和のヒーローやアニメ的イメージ、フィギュアの素材などをもとに、自身の内的記憶と視覚文化を融合したジオラマを構成し、それを写真に収めたうえで絵画に落とし込むというプロセスを経て、独自の“時間の風景”を描き出します。
重なり合うイメージの輪郭を、ある部分ではぼかし、ある部分では明瞭に描き分けることで、画面には“見えたことのある既視感”と“届かない過去”が同居。淡い色調と乾いた筆致は、観る者に遠い日の光景を想起させます。
2021年の小林和作奨励賞、同年の「uni Art Award」高島匡夫賞受賞など、若手ながら注目を集める存在であり、兄・木原幸志郎との共同アトリエから、静かに、しかし確実に自身の世界を構築し続けています。
1997年、兵庫県に生まれる。
2022年、尾道市立大学大学院 美術研究科 美術専攻 修了。
現在、兵庫県にて兄・木原幸志郎と共同アトリエで制作。
2021年、小林和作奨励賞、同年「uni Art Award 2021」にて高島匡夫賞を受賞。
2022年、「ブレイク前夜展2022」(Artglorieux/東京)、「二次元派展」(代官山ヒルサイドフォーラム、N&A Art SITE/東京)、「はじまれり」(ARTDYNE/東京)などのグループ展に参加。
2023年には、東京・ARTDYNEにて個展「ヒーロー」を開催し話題を呼ぶ。
木原の絵画には、「時間」と「記憶」を内包した映像的レイヤーが織り込まれています。
ジオラマ制作 → 撮影 → 絵画というプロセスを通して、原初的な風景やキャラクター、色彩が物質と記憶の中間地点として画面上に現れます。
・メディア横断的プロセスによる“記憶の編集”
フィギュアや玩具を素材にしたジオラマを構成し、それを写真に撮ってから再構築するという、多段階のプロセスが作品に時間性を与える。
・映像と絵画が交錯するレイヤー構造
ぼかしと明確な輪郭の対比によって、画像の“縁”が可視化され、視覚的な奥行きと記憶のズレが画面に生まれる。
・色彩と光による“ノスタルジアの喚起”
懐かしさを感じさせる中間色のパレットと、明度を抑えたトーンが、過ぎ去った時間の温度を呼び起こす。
・ヒーロー、フィギュア、昭和文化へのまなざし
個人的記憶と大衆文化のイメージが交錯し、固有と普遍のあいだに浮遊する絵画世界が構築される。
●《ヒーロー》シリーズ(2023)
昭和特撮のヒーロー像をベースに、フィギュアとジオラマによって再構築。絵画化されることで記憶と現実の境界が揺らぐ。
●《はじまれり》出展作(2022)
複数の画像を重ねたレイヤーの断片から構成され、都市的なノイズと幼少期の視覚体験を一体化。
●《二次元派展》出展作(2022)
アニメ的平面性と現実の素材感が交錯する作品。実体と影、存在と投影というテーマがにじむ。
木原健志郎の作品は、ジオラマから絵画へという独自の表現プロセスと、視覚文化への鋭い洞察力によって、コレクターやギャラリー関係者の注目を集めつつあります。
若手現代作家としては比較的早期から賞歴を重ね、現代美術的な市場での認知が進行中。
● 小中型作品(F4〜F10):10万〜25万円前後
● 代表シリーズ・個展出品作(F20〜F30):30万〜60万円前後
● 複数モチーフを組み込んだジオラマ由来の大作は高値傾向
作品が記憶と映像文化の中間地点にあることから、現代的感性を持つ若手コレクターや、アニメ文化・昭和文化を背景に持つ世代から特に支持される傾向があります。
木原健志郎の絵画は、どこかで見たことのあるヒーローの背中や、過ぎ去った記憶の断片を、まるで一枚の古い写真のように静かに映し出します。
そこには明確な物語も、劇的な構図もありません。ただ、時間を超えてこちらに語りかけてくる“光の気配”があります。
過去と現在、フィクションと記憶、具象と抽象——そのあわいに生まれる絵画の静けさは、見る者の中に眠っていた記憶をそっと呼び覚ますのです。
記憶とヒーローの画家/ノスタルジックレイヤー作品ご相談承ります。